会長挨拶

会長挨拶

第28回日本臨床内分泌病理学会学術総会
会長 中島 正洋
(長崎大学原爆後障害医療研究所腫瘍・診断病理学)

令和6年度日本臨床内分泌病理学会学術総会を長崎でお世話させていただくことになり、大変光栄に存じています。ご指名いただいた、方波見理事長をはじめ、理事・会員各位に感謝申し上げます。第28回学術総会のテーマは「内分泌病理学とダイバーシティ」としました。内分泌臓器の機能、構成細胞の多様性は申し述べるまでもありません。それ故に、内分泌疾患・病理の理解は複雑で簡単ではなく、多彩な臨床病理学的因子の考察を要し、高い専門性が要求される分野となり、この学会の会員であっても専門分野が違えば、その理解は困難です。本総会では多様性が特徴である内分泌病理学で共通のトピックスとなりうるテーマの依頼講演やシンポジウムを組みました。

特別講演は九州大学名誉教授諸橋憲一郎先生にお願いしました。「性スペクトラムー新たな性の捉え方」というテーマで先生の基礎内分泌学研究を基盤とした、生物の性スペクトラム、すなわち雌雄という二値的考え方では捉えられない連続性のある性分化の捉え方をお話しいただけるものと期待しております。招請講演としては、長崎大学原爆後障害医療研究所 国際保健医療福祉学研究分野の高村昇教授にお願いしました。高村先生は東日本大震災を契機とした原発事故発災以来、福島県民に寄り添い地域の復興のため放射線リスクコミュニケーション・マネージメントの観点より継続して尽力されています。「東京電力福島第一原子力発電所事故から13年:復興の現状と課題」というテーマで原発事故を経験した福島の復興の歴史を振り返り現在の問題点について考察いただきます。大阪大学大学院医学系研究科ゲノム情報学教室の谷内田真一教授には教育講演として、「消化器神経内分泌癌の網羅的ゲノム解析」というテーマでお話しいただきます。臓器横断的に発生しうる神経内分泌癌ですが、消化器由来のこの腫瘍の遺伝子プロフィールについてご紹介いただきます。

他にも長崎大学大学院医歯薬学総合研究科情報病理学の福岡順也教授によるデジタルパソロジーとAIが病理診断にどのような変革をもたらすかといったテーマのお話と関連して、シンポジウムでは内分泌病理学における画像解析、副腎疾患研究における病態解明による創薬の最前線といった、昨今のデジタル技術やデーター科学による内分泌病理学研究のトピックスをご紹介いただきます。

2022年9月には西九州新幹線が開業しました。武雄市から長崎市を結ぶ約20分の最も短い(しかし乗り心地の良い)新幹線です。それとともに、長崎市、特に会場である出島メッセの周囲では「100年に一度の変革期」と言われる程の様々な変化が起こっています。そのメインは「長崎スタジアムシティプロジェクト」で、Jリーグチームのサッカースタジアム、Bリーグチームのバスケットアリーナ、ホテル、商業施設を併設した、地域おこしのプロジェクトが、10月14日にグランドオープンを迎えます。日本の西端の地方都市である長崎の現在の活気を肌で感じていただき、昔からの和華蘭文化、食文化、また県内に点在する世界遺産といった観光などもお楽しみ下さい。多数の一般演題、CPC、学術奨励賞への応募をお待ちしております。皆様方と当地長崎でお目にかかるのを楽しみにしております。